学 習 指 導
学習効果を上げる学習集団の編制
〜 少人数指導授業を通して 〜
(平成17年度)
T はじめに
「心豊かな個が生きる教育」を目指した本校では,昨年度に引き続き,少人数指導授 業を導入した。基本的な学級の編制は変更しないものの,教科の授業において学級の枠 を越えて学習集団を編制することによって,集団内の生徒数を少人数化する少人数指導 を導入し,効果的な学習集団の編制や指導方法を明らかにしてきた。この少人数指導を 実施していく中で,きめ細かい指導によって生徒の主体的な学習が具体化でき,生徒が 学習内容を確実に身に付けたり,自分の個性を発揮したりすることができると考え,実 践に取り組んだ。
U 実践の内容
1 数学科
数学科では,一単元で,生徒が保護者と相談し,さらに教師の助言も加えながらコ ースを選択する習熟度別学習を実践した。

基本コースでは,既習内容を1年生の学習内容ま で掘り下げ,基本的な内容の復習,補充を目指した。 学習教材としては,教科書およびワークの基本問 題を取り扱った。
応用コースでは,基礎的・基本的内容を基にして 発展的な内容を取り入れ,数学的な見方・考え方を 発見し,自分のものとすることを目標とした。
下の表は,それぞれのコースを選択した生徒たちが 《少人数指導授業の一場面》
自ら設定した課題の一部である。
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| コース名 |
各コースの生徒が設定した課題の一部 |
基本コース
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○ 数学がよく分からないので,1年の内容から復習し,基礎学力を身に付けたい。
○ 1年の時遊びすぎたので,分からないことを1つでもなくしたい。 |
応用コース
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○ 基本的な内容より,もっと難しい問題に挑戦したい。
○ 友達同士で話し合いながら,よりよい方法で問題を解きたい。 |
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実践後,数学への関心・意欲・態度についてA,B,C規準に基付き,生徒の変容を調査した結果,下記のようであった。(資料1,2参照)
《基本コースを選択した生徒の変容》 《応用コースを選択した生徒の変容》
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| 到達規準の変容 |
人数 |
到達規準の変容 |
人数 |
| C規準→A規準 |
1名 |
A規準→B規準 |
0名 |
| C規準→B規準 |
13名 |
A規準→C規準 |
0名 |
| B規準→A規準 |
23名 |
B規準→C規準 |
0名 |
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| 到達規準の変容 |
人数 |
到達規準の変容 |
人数 |
| C規準→A規準 |
0名 |
A規準→B規準 |
15名 |
| C規準→B規準 |
2名 |
A規準→C規準 |
0名 |
| B規準→A規準 |
18名 |
B規準→C規準 |
5名 |
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| コース名 |
コース学習を終えての感想 |
基本コース
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・復習も多く,分からないところをしっかりできた ・気軽に質問できた
・たくさん発言できた ・同程度の人で考えやすかった ・楽しく受けれてよかった |
応用コース
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・いろいろな難しい問題をたくさんできてよかった ・応用力がついてよかった
・分からない問題があっても周りの人に聞けたし何とかできた ・やりがいがあった |
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上記の変容並びに事後のアンケート結果からも分かるように,多くの生徒の中に,数学に対する関心・意欲・態度の向上が見られた。これは,自己の課題に積極的に取り組んだ成果の表れと考える。しかし,応用コースにおいて,A規準からB規準になった生徒も15名いた。この原因として,学習領域の違い,構成メンバーによる学習環境の変化などがあげられる。
また,基本コースにおいて,下記のような数学的な見方・考え方の低下が見られた。これは,基本コースの生徒たちが,問題解決の場面において,よりよい考え方にふれる機会が減ったため数学的な見方・考え方の向上が見られなかったためと考える。
2 理科
授業に対する楽しさや分かりやすさについて,1学期(5/27)と2学期(11/25)に,生徒アンケートを実施し,その変容をとらえていくこととした。表1,表2は,その結果である。
〈楽しさについてのアンケート〉[表1]
| 1,2学期ともに,70%以上の生徒が少人数授業を楽しく分かりやすい授業と感じている。また,2学期の方がその数値が高くなっている。生徒の中に少人数授業が好意的に受け取られていると考えられる。少人数化によって,生徒一人一人を大切にすることができ,きめ細かな学習指導を行うことができたと考える。 |
|
授業は楽しいですか。
|
1学期
回答率% |
2学期
回答率% |
| 楽しい。 |
34.0 |
50.0 |
| どちらかといえば楽しい。 |
39.4 |
29.8 |
| どちらでもない。 |
17.0 |
18.4 |
| どちらかといえば楽しくない。 |
6.4 |
0 |
| 楽しくない。 |
3.2 |
1.8 |
|
〈分かりやすさについてのアンケート〉[表2]
| また,得意とする分野を担当することによって,専門性を生かすことができたと考える。 |
|
授業は分かりやすいですか。
|
1学期
回答率% |
2学期
回答率% |
| 分かりやすい。 |
34.0 |
36.0 |
| どちらかといえば分かりやすい。 |
37.2 |
39.5 |
| どちらでもない。 |
19.1 |
23.7 |
| どちらかといえば分かりにくい。 |
5.3 |
0 |
| 分かりにくい。 |
4.3 |
0.8 |
|
【観点別学習状況の評価結果の変容】
4観点(@自然事象への関心・意欲・態度,A科学的な思考,B観察・実験の技
能・表現,C自然事象についての知識・理解)の1,2学期の評価結果をもとに,
生徒の学力の向上の推移を調査した。表3は,その結果である。 [表3]
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関心意欲態度 |
科学的な思考 |
技能・表現 |
知識・理解 |
| |
1学期 |
2学期 |
1学期 |
2学期 |
1学期 |
2学期 |
1学期 |
2学期 |
| A |
4.6% |
21.4% |
13.8% |
9.9% |
13.1% |
23.7 % |
18.5% |
9.2% |
| B |
86.9 % |
73.3% |
73.1 % |
80.2 % |
73.1 % |
57.2 % |
65.3 % |
74.0 % |
| C |
8.5 % |
5.3% |
13.1 % |
9.9 % |
13.8 % |
19.1 % |
16.2 % |
16.8 % |
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関心・意欲・態度のA段階の生徒数が増加し,C段階の生徒数が減少している。
また,技能・表現のA段階の生徒数も増加している。少人数授業が生徒の関心・意
欲・態度及び技能・表現の向上に効果的であること考えられる。
しかし,科学的な思考のA段階の生徒数の減少,技能・表現のC段階の生徒数の
増加,知識・理解のA段階の生徒数の増加など4観点から考えると,生徒は少人数
授業を楽しく分かりやすいと感じているものの,学力全般の向上とは結びつかない
のではないかという大きな課題が浮かび上がってきた。
<3学期の実践>
ア 学習集団の編成の見直し
1,2学期の実践の課題を解決するために,学習集団の編成のあり方を検討して
いくこととした。本校では,数学科が2年生で通年を通して週3時間をすべて少人
数授業を実施している。少人数授業やティームティーチングについて研修を深める
現職教育で,2学期の一単元で,生徒が保護者と相談し,さらに教師の助言も加え
ながらコースを選択する習熟度別学習の実践内容が発表された。その概要は,基本
コースは,既習内容を1年生の学習内容まで掘り下げ,基本的な内容の復習,補充
を目指すコース。応用コースでは,基礎的内容を基にして発展的な内容を取り入れ
数学的な見方・考え方を強化することを目標とするコースであり,学力全般に向上
が見られたというものであった。
そこで,数学科の習熟度別学習の有り様を参考にし,3学期以降,コース別学習
を実施していくこととした。基礎的・基本的な内容を重視する基本コースと基礎の
上に一部応用的な内容も取り扱う応用コースを設定した。コース選択にあっては,
1学級全員で基本コース,応用コースのモデル授業をそれぞれ1時間ずつ実施し,
授業の内容を参考にしながら生徒が保護者と相談し,さらに教師の助言も加えなが
ら生徒がコースを選択するようにした。 [表4]
| 表4は,それぞれのコースの選択した生徒の割合である。それぞれのコースがほぼ同数であった。 |
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なお,1,2学期に実施していた中単元交互履修や第1分野・第2分野で専門に担当する指導についても見直しを図り,基本コース,応用コースともに通常の授業のように同じ学習内容を同時進行で進めていく教育課程に変更していった。また,基本コースを選択した生徒対象にその選択理由を調査した。表5は,その結果である。
〈基本コースを選択した生徒の主な声〉 複数回答可とした。[表5]
| 基 本 コ ー ス 選 択 理 由 |
回答率% |
| 理科が得意と思うけど,基本的な内容をしっかり勉強したい。 |
9.8 |
| 理科が不得意と思うから,基本的な内容をしっかり勉強したい。 |
68.9 |
| 理科が好きで,基本的な内容をしっかり勉強したい。 |
31.1 |
| 理科が好きでないから,基本的な内容をしっかり勉強したい。 |
21.3 |
| 基本コースを担当する先生によって選んだ。 |
6.6 |
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|
○ 基本的なことがよく分からないまま授業が進んでしまうことがあった。
○ 理科が好きだがテストがだめなので,基本的なことをじっくりやってほしい。
○ 理科の成績を上げたい。
○ この間のモデル授業で基本コースの方が自分にあっていると思ったから。 |
|
表5や生徒の主な声などから,基本コースへの期待感が伺える。生徒の期待に応
えていく必要性を切に感じた。
イ 少人数授業の学習効果
授業に対する楽しさや分かりやすさについて,3学期(2/7)にも,生徒アンケートを実施し,その変容をとらえていくこととした。なお,3学期については,基本コースを選択した生徒が対象になっている。表6,表7は,その結果である。
〈楽しさについてのアンケート結果〉 [表6]
| 3学期は,1単元を終了した時点でのアンケートに過ぎないが,1,2学期同様,多くの生徒がコース別の少人数授業を楽しいと感じている。 |
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授業は楽しいですか。
|
1学期
回答率% |
2学期
回答率% |
3学期
回答率% |
| 楽しい。 |
34.0 |
50.0 |
48.6 |
| どちらかといえば楽しい。 |
39.4 |
29.8 |
29.4 |
| どちらでもない。 |
17.0 |
18.4 |
14.7 |
| どちらかといえば楽しくない。 |
6.4 |
0 |
4.4 |
| 楽しくない。 |
3.2 |
1.8 |
2.9 |
|
〈分かりやすさについてのアンケート結果〉 [表7]
| とりわけ,分かりやすさについては,80% 以上の生徒が分かりやすいと回答していることが特徴的である。 |
|
授業は分かりやすいですか。
|
1学期
回答率% |
2学期
回答率% |
3学期
回答率% |
| 分かりやすい。 |
34.0 |
36.0 |
45.5 |
| どちらかといえば分かりやすい。 |
37.2 |
39.5 |
36.8 |
| どちらでもない。 |
19.1 |
23.7 |
20.8 |
| どちらかといえば分かりにくい。 |
5.3 |
0 |
4.4 |
| 分かりにくい。 |
4.3 |
0.8 |
2.9 |
|
基本コースでは,基礎的・基本的な学習内容にしぼり,生徒一人一人を大切にしてきめ細かな指導ができる少人数授業の利点を大いに生かすことができたと考える。
V おわりに
学習指導部の実践の中での生徒の学習や活動の様子・その声などから,積極的な取り 組みや自己の向上が見受けられ,心豊かな個が生きる教育が実践できつつある。今後, より一層問題・課題意識を高め,目的意識を明確にもたせていく工夫を行い,生徒の主 体的・内発的な動機に基付いた学習や活動の成立を目指していきたい。